Ai国際医療研究所

ジャーナルクラブ

3月のジャーナルクラブ

新しいメンバーも入り、楽しく論文を読みました!

本日クリティークした論文はこちらです^^

BURNETTE, J. L., RUSSELL, M. V., HOYT, C. L., ORVIDAS, K. & WIDMAN, L. 2018. An online growth mindset intervention in a sample of rural adolescent girls. Br J Educ Psychol, 88, 428-445.

地方女子学生(高校1年制)対象の成長マインドセットのオンライン教育教育無作為化比較試験です。

アメリカの4校の女子生徒を成長マインドセットをオンラインで学ぶグループと対照グループにランダム割り付けをして、前、直後、4か月後でマインドセット、学習モチベーション、学習効力感、成績、学校帰属意識(これだけなぜ入れたのか疑問)に群間で差があるか、また相関があるか媒介分析をしています。

成長マインドセット、固定マインドセットとは何か?

成長マインドセットは、自分が成長する、変化する可能性を信じる信念、固定マインドセットは自分はこういうもの、変わらないという信念です。

例えば、「私は数学が苦手。いい点数なんてとれない。一生このままよ」というのは固定マインドセット。

これに対して「私は数学が苦手。でもどうしたらうまくできるかな、どう工夫したら克服できるかな。努力すればきっともっとうまくできるはず」というのが成長マインドセットです。

ベースラインで群間差はありませんでした。

介入後、介入群(成長マインドセットを学んだ群)のマインドセットは対照群より有意に高かったです。しかし、学習モチベーション、学習効力感、成績、学校帰属意識は有意な差がありませんでした。

介入の有無で直接効果があったのはモチベーションのみでした。

マインドセットの高さが学習モチベーション、学習効力感、成績、学校帰属意識の有意な予測因子でした。

先行文献と異なる結果が出た理由としては、介入の弱さや、対象者の問題(介入群にちゃんと介入が理解されていたのか?)などなど、色々考えられます。

しかしながら、オンラインで成長マインドセットが高めることができるなら、コストもかかりませんし、有意義な介入だといえます。

課題としては、介入策の理解度を高めるための工夫が必要、成長マインドセット理解度合いも変数にいれるといいのかなぁということが考えられました。

11月ジャーナルクラブ

毎月英語論文を皆で読んでます

昨日は、毎月恒例ジャーナルクラブを開催しました!

毎回持ち回りでツーリズム、ゲーミフィケーション、アンガーマネジメント、ジャーナリング効果など興味のある研究をそれぞれ選び皆でクリティークをしています。

クリティークはその研究の理解を深めるために研究のお作法や内容について評価、吟味することです。

昨日の論文はこちら。

Making Self-Help More Helpful: A Randomized Controlled Trial of the Impact of Augmenting Self-Help Materials With Implementation Intentions on Promoting the Effective Self-Management of Anxiety Symptoms

  • February 2011
  • Journal of Consulting and Clinical Psychology 79(1):123-8

この前にこちらを含むif-then planの系統的レビューを読んだのですが、採択された無作為化比較試験を読んで理解を深めようということです。

if-then planは自分で条件を設定し、その条件のときにアクションをする、という決まりを作ることです。

これをきめておくと計画した行動の実行可能性があがるという研究です。

こちらの研究の面白いところはマニュアルであってもif-then を加えることで実行可能性が高まること。コストがかからず良いなぁと思いました。

私としては結果の交互作用についてホワイトボード使って説明したらわかりやすい!と写真を撮ってもらえてたのが嬉しかったです😆

研究者も混乱する人がいるので、研究者じゃない方に説明をしてわかってもらえるとすごく嬉しいのです😄

私の研究者としての活動は終わったわけじゃないと思う今日このごろ。

来月はトップユニバーシティの先生にご相談をうけ、研究コンサルに行ってきます🥰

ジャーナルクラブ10/17

本日のジャーナルクラブ担当は私で以下のペーパーを読みました。

Di Tian,Qiongyao Wang,Rob Law, and Mu Zhang, Influence of Cultural Identity on Tourists’ Authenticity Perception, Tourist Satisfaction, and Traveler Loyalty, Sustainability 2020, 12(16), 6344; https://doi.org/10.3390/su12166344

https://www.mdpi.com/2071-1050/12/16/6344/htm

観光客のAuthenticity(本格性、ホンモノ)に対する認識、旅行満足度、loyalty(観光地支持・愛着)に対する文化的アイデンティティの影響

Authenticityって無形文化遺産観光に不随してでてきた新しい概念らしく、ちゃんとした定義はないみたいであてはまる日本語もないのですが、唯一無二のもの、らしさ、みたいな感じです。

長崎でいえば、長崎くんちは無形でここにしかないAuthenticityになります。

このAuthenticityを評価する尺度を開発し、信頼性妥当性を検討し、実際にこれを使用してCultural identity(観光客のもつ文化的アイデンティティ)がAuthenticity認知に影響するか、またAuthenticityは旅行満足度、または観光地loyaltyに影響するかという研究でした。

例を交えながらみんなで読み解いていくと一人で読むより何倍も理解が広がります。

観光に関する研究なのに構成主義や実存主義といったワードもでてきて、頭をかしげていましたが、話しているうちにしっくりきたりします。

私達ジャーナルクラブの結論としては、Authenticityっていう最先端の理解を深められて(今年の研究ですからね~)よかったけど、満足度やLoyaltyにはあんまり影響ないんじゃないかな?、まだまだAuthenticityの理解を進めたうえで研究が必要、でした。

でもちゃんとした測定尺度を獲得できたのでよかったし、前回読んだドバイの論文の復習にもなって今回も「面白かった」です。

また次回も楽しみにしています。

注:現在ジャーナルクラブメンバーは募集していませんが、論文の読み方講座は来年ご興味がある方がいればやろうと思います。

ジャーナルクラブ(2020/8/27/)

昨日のジャーナルクラブは行動目標達成に対するif-then planの有効性に関するメタアナリシスでした。

if-then planとはもし~だったら~を実行するというような方略。
例えば、行動目標が毎日エクササイズをするだとしたら、それをするためにいつ、どこで、どのようになどの条件付けをします。
洗濯機をまわしたら、仕事の休憩時間になったら、など自分に都合のよいやり方でよいです。
朝起きたら水を飲む、家に帰ったらスクワットをする。

サンプルはメンタルヘルスに問題のある人たちで様々なゴール、方法、スケールをつかって行った実験論文で、結論は有効でしたが、限界も理解し解釈する必要があります。

論文読みながら違和感を皆覚えていたのですが、first author、博論でこれやられたみたいで作文大変だったんだろうな、、、って言うのがオーサーの状況検索してチラホラ見えかくれして同情してました😰

クラブのメンバーが論文読むことにはまってるといってくださり、日常で論文読んでおられて嬉しい限りです😃

皆が根拠を自分で取りに行く、検証することが当たり前になると社会は変わるのでしょう。

私は東北大学時代のゼミが楽しくて、また今その楽しい時間を得ることが出来て幸せです🤗

読んだ論文はこちら。

Does forming implementation intentions help people with mental health problems to achieve goals? A meta-analysis of experimental studies with clinical and analogue samples

Agoro Toli et al. Br J Clin Psychol. 2016 Mar.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25965276/

学術論文の読み方講座3回目は英語論文翻訳と理解の回

勿論オンラインですけど

本当は2回で終わるはずだった講座なのですが、4回までやることになりまして、今日3回目をやりました。

1回目は信頼性のある研究ってどんな研究か、英語論文の検索方法についてお話しました。

2回目は日本語論文のクリティークをやってみせる回。

本来ならここで終わりなのですが、英語論文クリティークのやり方について学びたいとご希望を頂き、3回目、4回目がきまりました。

3回目、今日は皆全文は読んでくるのですが担当箇所を翻訳発表し、論文に何が書かれているか理解することが目的です。

翻訳はご苦労されたみたいですが、皆さん頑張ってきました!

皆で通しで読み合わせをし、わからないところを確認し、しんどいので休憩とりながら3時間!終わるころにはうっすらと全貌がわかったかも?って感じです。

ここから4回目の実際のクリティークに向けて、読みなおし、わからないことを調べていきます。大変ですね!

でも大学院では、これを持ち回りで頻回にやります。

論文読めないと、研究はできませんから・・・

何度も読み、調べ、いろんな論文に触れることで科学的リテラシーが磨かれます。

メディアやSNSで流れてる情報は本当か?

真偽を見抜くセンスが磨かれます。

そして、あーでもない、こーでもない、これってどうなのって語り合い、終わった時のカタルシスは癖になります・・・(笑)

前職ではジャーナルクラブどころか、英語論文にも触れない大学にいましたので、知的で刺激的な交流に飢えておりました。

今またそういう時間を過ごすことができて、とても幸せです。

Aiの日常

交互作用効果復習、多分100回は読んでるけど毎回忘れる
濃い抹茶羊羹とと手作りザボン漬

今日は明日午前中のジャーナルクラブに向けて準備する日!

論文の結果を読むときはわくわくします。

物語を読み進めて結末は??と盛り上がりの部分だからです。

アブストラクトであらすじ(オチ含む)は読んでいるけど、結果の図表をみると解釈に広がりが出て、そういうことかー!とか、これは一概にはYESとはいえない、とか自分の中で勝手に盛り上がります。

ベースラインですでに独立変数に対する影響がありそうだったり、必要そうなデモグラがとられてなかったり、ばらつきが大きかったり、結果に影響する因子は様々。それらを含めて、結果は信頼に値するか?を読み解きます。

私みたいに物語より面白い、はまる、という人もいてもいいと思うんですよね、、、だって実際、よい研究は本当にプロットをよく練られていて、それでも仮説を覆されたり、予想以上の結果だったり、ちゃんとストーリーがある。そして何より、そういう論文は社会に貢献します。

最先端の知見を読みとくのは楽しいです。

そして明日午後は新しいウェルネスプログラムの外国人モニターテスト!

先日私のモニターも終わり、ブラッシュアップしてきました。私のモニターも英語でやって頂きました。

モニターなんですけど、本当に楽しかったし癒されました。

外国人向けに磨き上げられたプログラムですが、外国人に向けてできるなら、日本人に向けてももちろんできます。いずれは国内むけにもちゃんとやっていきたいと思っております!

【セミナー情報】学術論文の読み方実践講座

英語論文を読む会、ジャーナルクラブを月1回持ち回りでしております。

この度仲間を増やしたく、参加条件の「学術論文の読み方実践講座」をお安く開催させて頂くことになりました。

限定4名で、既に2名ご予約を頂いております。参加ご希望の方はお申込みをお願い致します。

学術論文の読み方実践講座

内容

世界の大学、病院、日本でもトップユニバーシティは毎週ジャーナルクラブ(抄読会)をやっています。

研究者も最初はド素人で、最初は英語論文は読めないし、どれがよい研究論文がなんてわかりません。それを育てるのが、このジャーナルクラブです。

例えば、がんの治療、とか一つの分野をとっても、毎日新しい研究がたくさん発表されます。自分のフィールドだけでもキャッチアップするのが大変です。研究室のメンバーが持ち回りで質の高い国際学術論文を選び、みんなでシェアし、沢山読んでいくことで研究者としての知識とスキルがアップしていくのです。

このジャーナルクラブがないと、いつまでたっても論文が読めるようにならず、研究スキルも身につかず、新しい知見を学べないことになります。

何故、英語論文なのか?

日本語で論文を検索してもよい論文がないどころか、研究が実施されていないことが多いです。また、良質の研究論文は、基本的に日本語ではなく、英語で査読がある雑誌に投稿されます(学会発表とは違います)。日本語でも検索しても出てこないモノが、英語だと何百とでてくることもよくあります。全部読むのは大変なので、良質の論文だけを選び読んでいきます。

ここでいう良質の研究論文、というのはどういう論文か知っていますか?研究者は、論文を読むときに、クリティークをして論文の信ぴょう性を評価します。

クリティークとは?

大学で触れなかった方、大学院でも触れなかった方、大学院に入りたい方、ジャーナルクラブがない研究室に入ってしまった方、根拠を見つける・評価する方法を知りたい方、学術論文を読めるようになりたい方、知りたい分野の最新の知見を学びたい方などなど、一般の方を含めた色んな方にジャーナルクラブには来てほしいと思っています。

子宮頸がんワクチンやその他のワクチンについて、根拠なく、もしくは根拠があるような言い方で世論を惑わせる人たちが増えました。世界的にもそうです。この人たちは、聞いた話ではなくその根拠となった一次文献を読んだことがあるのでしょうか・・・?おそらく最新の、良質の論文(コクランなどの系統的レビュー、メタ解析、無作為化比較試験)を読んでいたら、別の言い方、伝え方をすると思います。

一般の方にも、ぜひ、一次文献、学術論文を読めるようになって頂き、情報リテラシーを高めてデマや根拠のないまことしやかな甘言に惑わされないでほしいと思います。

自分の眼でみて、分析して、答えを出すスキルを身に着けてほしいと思います。

ただ、英語の学術論文を読むためには、和論文でクリティークができなくてはならないので、その素地となる、「学術論文の読み方実践講座」を実施します。

最終目標は英語論文を読むことなのですが、まずは、日本語で論文検索の仕方、検索の順番とパワーワード、読むべき論文の種類、読む論文の選択ポイントなど説明しながら一緒に検索を実践してもらいます。
2回目は、1回目の学びをもとに、自分で検索をしてきた論文をシェアして頂くとともに、日本語論文本文を1本クリティークする方法を実際に学んで頂きます。
ジャーナルクラブでは、この講座で論文検索とクリティークを学んだあと、持ち回りで好きな、良質の論文を読んでいきます。

申し込み方法

下記メールもしくはFBで参加ボタンを押してください。

main@aimedicalri.com

https://www.facebook.com/nagasakiaimri/

日時:下記2回セットですのでご注意ください。

1回目 4月4日(土)10時~12時

2回目 4月11日(土)10時~12時

場所:ツナグバサンカク 〒850-0054 長崎県 長崎市上町6-35-3F

持ち物:PC/タブレット/スマホなどネット検索できるツール(Wifiあります)、筆記具

料金:今回のみ1回5000円です。(通常15,000円/回)

参加者は限定4名で、現在2名が決まっています。早めのお申込みをお勧めいたします。

労働環境と心疾患死亡リスクに関する論文

労働年齢男性の労働環境と心疾患による死亡リスクについて、NIPPON DATAを使った追跡期間20年の研究論文です。

NIPPON DATA90 Research Group (2019). Association of work situation with cardiovascular disease mortality risk among working-age Japanese men: A 20-year follow-up of NIPPON DATA90. Circulation Journal, 83(7), 1506-1513. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-18-1067

https://keio.pure.elsevier.com/en/publications/association-of-work-situation-with-cardiovascular-disease-mortali

大規模と小規模企業の心臓疾患死亡リスクは違うのか?

年齢、ライフスタイル、心疾患リスク因子で調整し、結果、大きな企業や公的機関の労働者より小規模企業で働く正規雇用労働者は喫煙が多く、運動習慣は少なく、収縮期血圧が高いという結果でした。

心疾患死亡リスクは正規雇用者と自営業または会社役員で有意差はありませんでした。

年齢で調整した心疾患のハザード比は大規模企業の正規雇用者または公的機関の労働者に比べ2.53 (95%CI:1.12, 5.69)でした。

結論として、小規模企業の正規雇用労働者は心疾患死亡リスクが高いということです。

職場環境が生活スタイルに影響するというのは理解できますが、その逆、生活環境が職場の選択に影響する、ということもあり、どちらがより大きな要因かはわかりません。

下記のように喫煙、運動習慣の変更で心臓の状態が改善するという結果もありますし、これらの関連性は幅広く知られているところかと思います。

Smoking Cessation Program with Exercise Improves Cardiovascular Disease Biomarkers in Sedentary Women

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3163461/

小規模企業労働者でも禁煙と運動をすれば、リスクを減らせるのではないか、と考えます!

英語論文ジャーナルクラブ

英語論文を読む会でこちらのRCT論文を読み始めました。
Novel online daily diary interventions for nonsuicidal self-injury: a randomized controlled trial.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30134866


毎日のオンラインジャーナリング(日記)でリスカなどの自傷行為を減らせるか?という介入研究です。


結論、有意に減少。


自信をつけることに焦点をおいたよいこと探し的日記群、気がかりなことや感情を記述する群と感情を入れず毎日あった事を書くだけのコントロール群のスリーアームなのですが、コントロール群の方が感情を記述する記述を行う群より自殺企図が減ったっていうのが面白かったです。

このフィールドを知り尽くした研究者の仮説と違う結果がでるなんてドラマチック!

一次文献は面白いです。

実験してみないとわからないことを実験するので、ポジティブな結果や仮説通りにならないこともあります。沢山の先行文献を読んで仮説をたてた研究者の心情を考えると複雑ではありますが、読んでて楽しいのは、予想通りの結果より予想外だったり予想を越えた結果なのですよねー。

他の介入研究でも毎日事実のみ書く介入はよい効果を示していて、ただあったことを毎日書くだけで精神衛生によいなら、やってみようかなぁと思いました。