よい習慣を身に着け維持するためには?

2021年5月29日(土)、定例ジャーナルクラブでした。

今回は前説はインフォデミックに関する論文、どんな人がデマ情報を信じやすいか、その対処は?という論文を読んでいます。

 「Covid-19 インフォデミック -誤情報に対する疫学モデル応用」

Scales, D., Gorman, J., & Jamieson, K. H. (2021). The Covid-19 Infodemic — Applying the Epidemiologic Model to Counter Misinformation. New England Journal of Medicine. https://doi.org/10.1056/NEJMp2103798

スライドの一部を公開しますので、みてみてくださいね^^

アメリカのインフォデミック例、興味深いです。日本ではここまで有力者がインフォデミックのトリガーになったということはなかった気がします。

陰謀論(笑)、予防行動やワクチン抵抗性に関する相関研究では、陰謀説信じている度合いの高い人は予防措置(マスク等)やワクチンへの抵抗感が高いかもしれないと示唆しています。

詳しくはこちらをおよみください。

Romer, D., & Jamieson, K. H. (2020). Conspiracy theories as barriers to controlling the spread of COVID-19 in the U.S. Social Science & Medicine, 263, 113356. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2020.113356

今回のジャーナルクラブはこちらの論文でした。

Kwasnicka, D., Dombrowski, S. U., White, M., & Sniehotta, F. (2016). Theoretical explanations for maintenance of behaviour change: a systematic review of behaviour theories. Health Psychol Rev, 10(3), 277-296. https://doi.org/10.1080/17437199.2016.1151372

ABSTRACT
背景:行動変容介入は、「一時的」な行動変容を達成するための支援として有効である。しかし、行動変容の「維持」はほぼ達成されない。本レビューの目的は、将来の研究及び実践に役立つよう、行動変容維持に関する現在の理論的説明を特定し、統合することである。
方法:関連する可能性のある理論を電子データベース(Ovid MEDLINE、Embase、PsycINFO)を系統的に検索し特定した。加えて、80の理論からなる既存のデータベースを検索し、25人の理論専門家に意見を求めた。行動変化の維持に関する仮説が記載されたもののみ理論として選択した。選択された理論は、行動変化維持に関する包括的説明を特定するためにテーマ別に統合された。初期の理論的テーマは相互検証された。
結果:117の行動理論が確認され、そのうち100の理論が選択基準を満たした。行動変化維持の理論的説明を代表する包括的で相互関係がある5つのテーマが浮上した。行動変化維持の理論的説明は、開始から維持までの動機、自己調整、資源(心理的および物理的)、習慣、および環境と社会の影響の異なる性質と役割に焦点を当てている。
考察: 行動変容の理論的説明と行動変容維持の理論的説明には明確なパターンがある。このレビューから得られた知見は、健康行動の維持を促進する介入の開発と評価の指針となり、行動変化維持の統合理論の開発に役立つ。

ジャーナルクラブで初めて取り扱う質的研究でした。

量的系統的レビューは読んだことがありましたが、質的系統レビューは初めてだったので、違和感があるし、読むのは大変だったと思います。

でもこれはこれで、大切な、重要な、価値がある研究です。

質的研究は、難しく深いです。

よく院生が質的研究やりたい、と言いますが、やるなら何年もかかることを、膨大な時間とエネルギーが必要であることを覚悟した方がよいです。

博士課程の時に質的研究を馬鹿にしてるドクターを見ましたが、私はちゃんとした質的研究ができる研究者は尊敬しているし、貴重だと思っています。

質的研究者は自分自身がツールです。

数字で出す方が簡単。

データアナリストも沢山育っていますし、計算するだけなら多くの人ができますが、現象を正しくとらえ、聞き取り、それを誰が見ても正しく表現することができる力のある人は少ないです。

今回の論文は丁寧に、紡ぎあげられたよい論文でした。

100本、一つ一つの文献を読み、イントロダクションも丁寧に引用を使いながら自分たちの研究の意義を語っていました。

結果は、主観が前面に出ますのでクリティークもやや厳し目になりましたが、ディスカッションできちんと研究の限界もつづられていました。

正直、私は質的研究論文は読まないのですが、久しぶりに読んだこの論文で、質的研究はやはり必要なんだと強く感じましたし、貴重な機会となりました。

だから、ジャーナルクラブは面白いんですよね・・・

次回のジャーナルクラブは6月26日です。

見学希望の方はこちらまでご連絡ください。

main@aimedicalri.com